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☆☆
法 話
☆☆
【 私の如是我聞 】
第72回
称えるこころ*
信因称報
(
しんいんしょうほう
)
更新
平成29年8月
夏休みが終わると、小さな子どもさんのおかあさん方は、
「ああ、やれやれ,ほっとする」
とおっしゃいます。一日中、
食事
(
しょくじ
)
やら遊びやら、ときには用もないのに、子どもたちに、
「おかあさん、おかあさん」
と連呼され、その声に振り回されることから解放されるからでしょう。でも小さな子どもたちはよばずにはおれません。
最も頼りにする人の名前をよぶというのは、どうやら人間の生まれついての習性のようです。
ところで、念仏するというのは、
阿弥陀
(
あみだ
)
さまの名前をよぶことですが、 私たちはどういうつもりで阿弥陀さまの名前をよぶのでしょうか?
阿弥陀
(
あみだ
)
さまのご本願【第十八願】には、
「あらゆる人びとを、信心と念仏によって浄土に生まれさせよう」
と誓われています。
これは、阿弥陀さまの願いが私の心に届いて信心となり、口にあらわれて念仏となることが示されています。
つまり、私が救われていくすがたである「信心と念仏」の両方が出ています。
ところが、このご
本願
(
ほんがん
)
が確かに
成就
(
じょうじゅ
)
したことを証明されるところ 【
第十八願成就文
(
だいじゅうはちがんもん
)
】では、お釈迦さまが、
「阿弥陀さまにおまかせする心【信心】が起こったそのときに浄土に往生することが
決定
(
けつじょう
)
して救われるのである」
とお説きになります。
ここでは「念仏」は示されず、「信心」だけしか出ていません。
親鸞聖人
(
しんらんしょうにん
)
は、ここに注目されて、浄土に往生することが
決定
(
けつじょう
)
するのは、ただ信心一つによるのだと
仰
(
おお
)
せになりました。
決して、念仏するという私の行為によって、救われることが
決定
(
けつじょう
)
するのではないと言われたのです。
それでは、なぜ念仏するのかと言えば、阿弥陀さまにおまかせする心【信心】が起こったならば、その喜びの上から自然に阿弥陀さまの名前を 称える【念仏】に違いないと言われたのです。
つまり、生きている間も死んでからも本当に頼りにする方が阿弥陀さましかないと気づいたからこそ、自然に阿弥陀さまの名前を称えることになるのです。
しかもこの信心も念仏も、もともとは阿弥陀さまの願いから起こったものです。
だからこそ、他力の信心・他力の念仏と言われるのです。
ですから、私たちが念仏するのは、
「阿弥陀さまどうか助けてください」
と何らかの見返りを期待してよぶのではありません。
一人暮らしのおばあさんが、お仏壇に向かって、
「阿弥陀さま、ちょっと出かけてきます」
と
挨拶
(
あいさつ
)
をして、玄関を出られました。
鍵を閉めて歩き出そうとしたそのときに、
「
南無阿弥陀仏
(
なもあみだぶつ
)
」とお念仏を申されました。
そのとたん、自分のお念仏の声を聞きながら、
「あらまあ!今、ご挨拶をしたところなのに、もう私といっしょにいてくださる」
と嬉しそうにおっしゃったそうです。
他力の教えとは、このように力強いものです。
見かけが
雄々
(
おお
)
しい力強さではなく、たとえ弱々しくとも
芯
(
しん
)
の強さがあります。
なんといっても、阿弥陀さまがごいっしょなのですから。
※『ひらがな真宗』本願寺出版社 定価:\756(本体\700+税) 電話 0120-464-583
最近、「仏教の言葉がむずかしい」「漢字が多くてどうも」という若い方の声や、「高校生や中学生にもわかりやすく真宗のご法話をしたいが」 という年輩方の声をよく耳にします。
※本書は、『ひらがな真宗』の題が示すとおり、まさにその声にこたえるべき待ち望まれていた書です。
「
名号
(
みょうごう
)
」 「
本願
(
ほんがん
)
」 「
浄土
(
じょうど
)
」 「
他力
(
たりき
)
」といった真宗の用語を、その用語のしめす雰囲気でわかったつもりで使うのでなく、 専門的な言葉を使わずに説明したり、ご法話するすることは簡単なことではありません。
また、せっかくわかりやすくと思っても、やさしい言い回しにとらわれすぎて、真宗の教えの真意がうすれてしまっては意味がありません。
その点でも本書は、実にすぐれた書であるといえます。
若い方にもわかりやすく、日常生活の中の身近な話題をピックアップしていて、肩の力を抜いて読むことができます。
それでいて温もりのある、心にひびく文章には、こども会を続けてこられた森田氏【森田 真円氏】のお人柄があふれているような気がします。
一九九九年十二月
東光 爾英 【『ひらがな真宗』「はじめに」より抜粋】
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