《 聖典の講座 》
 
『無常迅速 生死の事大なり』

  
第57回 此方十劫邪義章このほうじっこうじゃぎしょう大意たいい 更新 平成28年5月


近ごろこの地方の念仏者の中に、根拠のないあやしげな文句で、これこそが信心を得たすがただなどといい、 しかも自分は浄土真宗じょうどしんしゅうの信心を よく心得ていると思っているものがいます。
そのものは、 「十劫じっこうの昔に阿弥陀如来となられたときに、 如来が私たちの往生をも定めてくださったご恩を忘れないのが信心である」というのです。
これは大きなあやまりです。
阿弥陀如来がさとりを開いて仏となられたことを知ったとしても、私たちが往生することのできる他力の信心のいわれを 知らなければなんにもなりません。
これより後は、まず浄土真宗の信心のいわれをしっかりと心得るべきです。
その信心とは、 『大経だいきょう』には、 「至心ししん信楽しんぎょう欲生よくしょう」と説かれ、 『観経かんぎょう』には、 「至誠心しじょうしん深心じんしん回向発願心えこうほつがんしん」と説かれ、 『小経しょうきょう』には、
一心いっしん」と説かれていますが、すべて他力の信心をあらわしたものです。
その信心とは、自力のはからいを捨て、ひたすら阿弥陀如来を信じ、その他の神や仏に心をかけず、 二心ふたごころなく阿弥陀如来に 帰命きみょうすれば、み仏は 光明こうみょうの中におさめとってお捨てにならないのです。
これが信心が決定けつじょうした姿です。
このように心得た後の念仏は、み仏が信心を与えてくださったご恩に報いる念仏であると思うべきです。
このような人を信心が決定した念仏者というのです。


※『御文章ごぶんしょう ひらがなばん拝読はいどくのためにー』(本願寺出版社 定価:\756(本体\700+税) 電話 075-371-4171)

  蓮如上人五百回遠忌法要れんによしょうにんごひゃっかいおんきほうよう記念きねんして 『御文章ごぶんしょうーひらがなばん』が ご制定せいていになりました。
本書ほんしょ は、この『御文章ごぶんしょう』を 有縁うえん方々かたがたが、 ただしく 拝読はいどくし、 おきくださった 趣旨しゅしをよく ご理解りかいいただくように 配慮はいりょして 制作せいさくした 解説書かいせつしょです。
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蓮如上人御一代記聞書れんにょしょうにんごいちだいきききがき』に、 「『御文章ごぶんしょう』は、 凡夫ぼんぶ浄土じょうど往生おうじょうする みちあきらかに うつかがみ」【一七七条】であり、また 「毎日まいにち、 『御文章ごぶんしょう』の とうとい お言葉ことばかせていただくことは、そのつど たから頂戴ちょうだいするようなもの」【二八八条】であると べられている 所以ゆえんです。
本書ほんしょ編集へんしゅう浄土真宗教学研究所じょうどしんしゅうきょうがくけんきょうしょ担当たんとういたしましたが、 勤式指導所ごんしきしどうしょ協力きょうりょくて、 拝読はいどく方法ほうほう考慮こうりょして 本文ほんぶんにわかりやすい 仮名がな拝読符号はいどくふごうし、 研究所けんきゅうしょにおいて、 脚註きゃくちゅう巻末註かんまつちゅうもうけて、 各通かくつう大意たいい解説かいせつするなどの 措置そちこうじました。
本書ほんしょを、 ご制定せいていの 『御文書ごぶんしょうーひらがなばん拝読はいどく手引てびきとして、いつでもどこでも ひもとき、 活用かつよういただくことを 念願ねんがんいたします。

 平成十年十一月十三日
 浄土真宗教学研究所所長
    石田慶和
【「刊行にあたって」より 抜粋】


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