《 聖典の講座 》
 
『無常迅速 生死の事大なり』

     
第171回  蓮如上人御一代記聞書れんにょしょうにんごいちだいきききがき新釋 更新 2025年11月

 (42) 愛語の教化
 ゆふぎり、案内をもまうさず、ひとびとおほくまいりたるを、美濃殿まかりいで候へと、あらあらと御まうしのところに、仰に、さやうにいはんことばにて、 一念のところをいひてきかせてかへせかしと、東西を走まわりて、いひたきことなりと仰られ候とき、慶聞房なみだを流し、あやまり候とて讃嘆ありけり。
 皆皆、 落涙まうす事、かぎりなかりけり。
 
 【意訳】
 夕暮れどきに、案内も乞わずして、御門徒の人々が数多く御殿へ参上したので、 美濃殿みのどのすなわち 慶聞房きょうもんぼうがとがめて、「案内も乞わずに参上するとは 無作法ぶさほうなことである。さっさと退出しなさい」と 荒々しく叱りつけたところ、蓮如上人がこれをおききになって、「そんな叱るひまがあったら、その言葉で、たのむ一念のことわりいいきかせて帰してやっておくれよ」とさとされた。
 そして「東西をあちらこちら走りまわってなりとも、たのむ一念のことは、皆の衆にいいきかせたいことである」と仰せられたとき、慶聞房は涙を流して「まちがっておりました」と おわび申し上げて、仰せのとおりたのむ一念のことを讃嘆した。
 御門徒衆もこれを見聞して、みなみな、とめどもなく落涙して、感動するのであった。
 
 【解説】
 蓮如上人の切実な御念力、慶聞房の素直な態度、いかにも、尊い床しいものである。
 そして 愛語あいごの教化があたたかく感触される。



 『蓮如上人御一代記聞書れんにょしょうにんごいちだいきききがき新釋』 
    梅原真隆うめはらしんりゅう
本願寺出版社
電話 075-371-4171
 

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