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《 聖典の講座 》
『無常迅速 生死の事大なり』
第153回
蓮如上人御一代記聞書
(
れんにょしょうにんごいちだいきききがき
)
新釋
更新
2024年5月
(24)
名号
(
みょうごう
)
の
本尊
(
ほんぞん
)
のたまはく。南無の字は、聖人の御流義にかぎりて、あそばしけり。
南無阿弥陀仏を泥にてうつさせられて、御座敷にかけさせられて、仰せられけるは、
不可思議光仏、無碍光仏も、この南無阿弥陀仏をほめたまふ徳号なり。しかれば、南無阿弥陀仏を本とすべしと、おほせられ候なり。
【意訳】
蓮如上人は仰せられた。
上人が名号を御染筆なさる際、南無の二字はかならず親鸞聖人の
御流義
(
ごりゅうぎ
)
をまもってお書きなされた。
そして南無阿弥陀仏の六字名号を
金泥
(
こんでい
)
をもって御書写なされ、それを御座敷へおかけになって、
「名号にはこの六字名号のほかに、
不可思議光仏
(
ふかしぎこうぶつ
)
をたたえたのもあり、
無碍光仏
(
むげこうぶつ
)
をたたえたのもある。
けれども、これは
六字名号
(
ろくじみょうごう
)
にそなわる
光明
(
こうみょう
)
の
功徳
(
くどく
)
を
讃嘆
(
さんだん
)
なされた
徳号
(
とくごう
)
である。
それであるから、南無阿弥陀仏の六字名号を
根本
(
こんぽん
)
と
心得
(
こころえ
)
て
拝
(
おが
)
むべきである」
と仰せられた。
【解説】
蓮如上人
(
れんにょしょうにん
)
は
一宗
(
いっしゅう
)
の
風格
(
ふうかく
)
を
親鸞聖人
(
しんらんしょうにん
)
の古に復元することを念願せられた。
今条も、こうした念願のあらわれのひとつである。
本尊
(
ほんぞん
)
については
親鸞聖人
(
しんらんしょうにん
)
のとおりに
名号本尊
(
みょうごうほんぞん
)
を依用することを念願して、無数の名号を染筆して授与なされた。
その名号を染筆なさるにも、厳格に親鸞聖人の御流義を伝えさせられた。
即ち親鸞聖人の御流義では、南無の「無」の字は古字の「无」をもちい、その「无」の字も、下の一という字画は筆をうちつけるところに爪のある「无」の字を もちいられたのである。
こうした形式の末端にいたるまでも、親鸞聖人の風格を如実に伝えようとなされたのである。
また、
親鸞聖人
(
しんらんしょうにん
)
は
名号本尊
(
みょうごうほんぞん
)
としては、三種の名号を依用された。
第一は南無阿弥陀仏の六字名号である。
第二は 「
南無不可思議光如来
(
なもふかしぎこうにょらい
)
」という九字名号、
または
「
南無不可思議光仏
(
なもふかしぎこうぶつ
)
」という八字名号である。
第三は 「
帰命尽十方無碍光如来
(
きみょうじんじっぽうむげこうにょらい
)
」という十字名号、または、
「
南無尽十方無碍光如来
(
)
」という十字名号である。
このうち、六字名号は基本であり、九字名号と十字名号は徳号であると示されたのである。
これによって、中尊に六字名号をかかげ、九字名号と十字名号を
脇掛
(
わきがけ
)
とする
格式
(
かくしき
)
がさだまり、原始教団の
光明本尊
(
こうみょうほんぞん
)
の多趣多彩がいくらか整理されたわけである。
※『
蓮如上人御一代記聞書
(
れんにょしょうにんごいちだいきききがき
)
新釋』
梅原真隆
(
うめはらしんりゅう
)
本願寺出版社
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