《 聖典の講座 》
 
『無常迅速 生死の事大なり』

     
第152回  蓮如上人御一代記聞書れんにょしょうにんごいちだいきききがき新釋 更新 2024年4月

 (23) 唯信ゆいしん解脱げだつ
 
 七月廿日御上洛にて、その日、仰せられ候。
 五濁悪世のわれらこそ、金剛の信心ばかりにて、ながく生死をすてはてて、自然の浄土にいたるなれ。
 この次をも、御法談ありて、この二首の讃のこころをいひてきかせんとて、のぼりたりと仰候なり。
 さて、自然の浄土にいたるなり、ながく生死をへだてける。
 さてさて、あらおもしろやおもしろやと。くれぐれ御掟ありけり。
 【意訳】
 前条にあるように、四月十二日に堺へ下向せられたが七月二十日に上洛せられた。
 上洛じょうらくせられたその日、すぐに一同に対して
 「五濁悪世ごじょくあくせのわれらこそ、 金剛こんごうの信心ばかりにて、ながく生死をすてはてて、 自然じねんの浄土にいたるなれ」という一首をひき、
 その次の「金剛堅固の信心の、さだまるときをまちえてぞ、 弥陀みだ心光摂護しんこうしょうごして、ながく 生死しょうじをへだてける」
 という一首をひき、二首の 和讃わさんを引いて 御法談ごほうだんがあった。
 そして「この二首の 和讃わさんのおこころを、皆の ものに言い聞かせたいとおもうて、わざわざ堺から 上洛じょうらくしたのである」と おおせられた。
 さて、ありがたいことである。
 この 和讃わさんには 「自然の浄土にいたるなり、ながく生死をへだてける」とある。
 五濁悪世ごじょくあくせにさまよう 罪業ざいごうの重いわれらが、めぐまれた 金剛こんごうの信心ひとつで、 無為自然むいじねんの浄土に往生して、永久に生死の迷をすてて、 悟をひらくのである。
 さてさてたのしくよろこばしいことである。
 あらおもしろや、あらおもしろやと、くりかえしくりかえし、上人は おおせになったことであった。

 【解説】
  『高僧和讃こうそうわさん』の二首の意味を伝えるために、 上洛じょうらくされた 上人しょうにん懇念こんねんにはふかく感動される。
  信心ひとつで迷を転じて悟を開くという、 唯信独脱ゆいしんどくだつ妙趣みょうしゅを味わう 恍惚こうこつたる 信境しんきょうがうるわしくあらわれている。
  



※『蓮如上人御一代記聞書れんにょしょうにんごいちだいきききがき新釋』 
    梅原真隆うめはらしんりゅう
本願寺出版社
電話 075-371-4171
 

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