《 聖典の講座 》
 
『無常迅速 生死の事大なり』

     
第147回  蓮如上人御一代記聞書れんにょしょうにんごいちだいきききがき新釋 更新 2023年11月

 (17) 歳末さいまつの御礼
 十二月六日に、高田殿へ御下向にて候あひだ、五日の夜は、大勢、御前へまいりさふらふに、仰せに、今夜はなにごとに人おほくきたりたるぞと。
 順誓まうされ候は、まことにこのあひだの御聴聞まうし、ありがたさの御礼のため、また明日御下向にて御座さふらふ、御目にかかりまうしべしかのあひだ、歳末のためならんとまうしあげられけり。
 そのとき、仰せに、無益の歳末の礼かな。
 歳末の礼には、信心をとりて礼にせよと、おほせ候ひき。

 【意訳】
 明応四年十一月下旬に山科において、御正忌を御 つとめになった 蓮如上人れんにょしょうにんは、十二月六日より富田の 教行寺きょうぎょうじへ下向されることになったので、その前夜即ち五日の夜、大勢の門徒が、上人の 御許おんもとへ参上したとき、上人は 「何故なぜ、今夜はこんなに沢山の人が参ったのか」と御尋ねになった。
 順誓じゅんせいが「このあいだ御正忌中に 御化導けどうを蒙ったありがたさの御礼のためと、また明日富田へ御下向になるので、御眼にかかりたいとのことでありましょう。
 定めて年末の御礼のために皆の ものが参ったので御座いましょう。」と申し上げたところ、上人は「それは無意味なことである。そんな 虚礼きょれいよりも、もっと肝要な 信心しんじんをいただいて年末の御礼にしてくれよ」と仰せられたことであった。
 
 【解説】
  第一条だいいちじょうの年頭に「念仏申さるべし」と道徳にさとされたことと 対照たいしょうして、この「歳末の礼には 信心しんじんをとりて礼にせよ」のおさとしは、一貫した 警策けいさくであることがわかる。
 上人が一宗を 再興さいこうなされたのは、全くこの念力のあらわれであった。



※『蓮如上人御一代記聞書れんにょしょうにんごいちだいきききがき新釋』 
    梅原真隆うめはらしんりゅう
本願寺出版社
電話 075-371-4171
 

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