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法 話
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【 私の如是我聞 】
第140回
説法と聞き手の姿勢と
根機
(
こんき
)
更新
2023年4月
『一地の生ずる所、
一雨の潤す所なりといえども、
しかも
諸
(
もろもろく
)
の 草木に、
おのおの差別有るが如し』
【
法華経
(
ほけきょう
)
】
教室の中は、子供たち特有の匂いで満ちみちていました。教壇の上の先生は、波にのったように、大きな声で説明していました。
ここは大切なところだと思うと、先生は何回もくり返してしゃべりつづけていました。
子供たちの中には、隣の女の子と何かごそごそ話をしている男の子がいました。
先生の
視線
(
しせん
)
がその方に向けられると、その時だけは二人ともすまして、熱弁に聞きいりました。
机にひじをついて、輝くようなまなこを先生の顔になげかけている子供もいました。
弁当をそっと出して「今日のおかずは何たろう《とみている女の子もいました。
机の上にナイフで彫刻している豆芸術家もいました。
同じ場所で、同じ先生が、何かについてしゃべっています。
しゃべっているその声は、一人ひとりの耳に同じように聞こえているはずです。
しかしながら、おなじように理解されているとは限りません。
一人ひとりの子供の顔、頭、そして聞いている態度がすべて違うように、その理解している事も違っています。
もちろん、ことばは一つですが、それぞれの受けとり方で、一人ひとりの子供の力相応に聞きとっているのです。
今のお経の文は、説き手と、さまざまな聞き手との関係について、たとえ話を出して説明しています。
全世界をおおう雲から降った雨は、あらゆる草木をうるおします。
大樹は大きな根、大きな茎、大きな枝、大きな葉と順々にその水を吸収します。
大きな樹木も小さな木も、雑草も毒草も、それぞれの力に応じて、うるおされて成長します。
同じ雨、同じ味の水は、こうして、それぞれに異なった種類の草木を同じ土地に育てるのです。
お釈迦さまも同じなのです。
同じように説法なさいますが、聞き手の姿勢、根機によって、受け取り方が変わってくるわけです。
人の話を聞くときも、かんたんに「面白い《とか、「くたらん《とか批評することは考えものです。
面白いというのは、たまたま自分の思っていることに合ったということでしょうし、くだらないというのも、その話そのものがくだらないのではなくて、自分の関心がそちらに向いていなくて、受け取る態勢ができていない場合もあるのです。
※『ひかりの言葉』
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