2024年9月 第155話

朝事*住職の法話

とおきはちかき道理」
     
 住職法話をお読み頂きまして、有難うございます。
 今月は「とおきはちかき通理」という題にしました。
 
『ある法事で、息子さんから亡き両親の話を聞いた。
 両親とも広島で終戦を迎え、衣食を欠く苦しい生活を経験された後、父は自動車関係の仕事を始めた。
 その頃、結婚して、別に始めた飲食店が当たり、そのもうけで工場を拡張した。
 いいことばかりは続かず、火事で工場が半焼したり、お客さんが夜逃げしたり、大変だった。
「僕が中学生になるまでに数度、なぜか京都の西本願寺に行ったことがある。
 土曜の夜に母がにぎり飯を作り、父の運転で3人で今でいう弾丸ツアーのようにして行ったのです。」と息子さん。
「両親とも確か阿弥陀堂の前だったと思うが、ただ手を合わせるだけで1時間ほどいた。
 そのときに『西本願寺は親鸞さんのお寺で、親鸞さんは自分たちのような学のない者でも手を差し伸べてくれる』と話していました。」

 両親が80代半ばになった頃に同居し、「老人ホームに入りたい。」と言うので家族で話し合い、1年ほどの期間を待って入所することに決めた。
 一年後の入所が決まると、両親はそれまでできなかったことをいろいろと始めた。
 仏壇を求めて多くの時を仏壇の前で過ごしていた。
 2人が施設に入った頃から、西本願寺へ夫婦で納骨してほしい、と母が言うようになった。
 それから程なく父が、1年後には母が往生した。
 遺品の中からは「歎異抄」がみつかった。
 息子さんは「いろいろな苦労の中、仏に救いを求めていたこともあったと思います。もっと両親と話をして、本人たちのことを知ってあげるようにすればよかった。
 だから故人の希望に沿うことを考えると気が晴れるのです。」と言われた。

 私は、ご多用な中にもかかわらず、本願寺に参られたというお話を聞いて、蓮如上人の言葉を思い出した。
 「遠きは近き道理、近きは遠き道理なり。灯台もと暗しとて、仏法を不断聴聞申す身は、(中略)『いつものこと』と思い法義におろそかなり。
 遠く候(そうろう)人は仏法を聞きたく大切に求むる心あるなり。
 仏法は大切に求むるより聞くものなり」』
 
 【「中国新聞セレクト コラム『想』令和6年8月31日】
 

 『ホンマルラジオ奥田朋子さんの呼びかけにより、中国新聞セレクトの「想」というコラムを書かせて頂き、掲載して頂きました。』                                                


   
 『ご清聴頂きまして、有り難うございました。 称名』


 ☆☆法語☆☆      
                                                 
         
*遠いものが却って近く、近い
           
ものが却って遠い道理がある。 
           
世間の諺にも「灯台もと暗し」  
とあるように、仏法をいつでも 
聴聞できる人は、そのお陰を  
厚くこうむりながら、ありふ 
れたことのように思い、法義を 
粗略にしやすい。その反対に、
遠く離れている人々は、却って   
仏法を聴きたく思い、大切に仏  
法を求める心があるものである。 
仏法は大切に求めるところか 
ら、はじめて真剣に聴くことが出来 
るのである。 
「灯台もと暗し」 
『蓮如上人御一代記聞き書き』 


ようこそ、お聴聞下さいました。有難うございました。合掌

最後に、本願寺が作成した「拝読 浄土真宗のみ教え」の一節を味わわせて頂き終わらせて頂きます。有難うございました。

「今ここでの救い」

 念仏ねんぶつおしえに あうものは、いのちを えて はじめて すくいに あずかるのではない。 いま くるしんでいるこの わたくしに、 阿弥陀如来あみだにょらいねがいは、 はたらきかけられている。
親鸞聖人しんらんしょうにんおおせになる。
 信心しんじん さだ まるとき 往生おうじょうまた さだまるなり
 信心しんじん いただくそのときに、たしかな すくい にあずかる。 如来にょらいは、 なやくるしんでいる わたくしを、 そのまま きとめて、 けっして てる ことがない。 本願ほんがんの はたらきに あう そのときに、 煩悩ぼんのうを かかえた わたくしが、 かならほとけになる さだまる。 くるしみ なや人生じんせいも、 如来にょらい慈悲じひあうとき、 もはや、 苦悩くのう のままではない。 阿弥陀如来あみだにょらいいだかれて 人生じんせいあゆみ、 さとりの 世界せかいみちびかれて いくことになる。 まさに いま、 ここに いたり とどいている すくい、 これが 浄土真宗じょうどしんしゅうすくいである。






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