《 聖典の講座 》
 
『無常迅速 生死の事大なり』

第35回 煩悩をもつままのお救い 更新 平成26年7月

(偈文) 
よく一念喜愛いちねんきあいしんほつすれば、
煩悩ぼんのうだんぜずして 涅槃ねはんるなり。
         (第三十五話〜三十六話)

 本願ほんがんを信ずる人の いただく利益りやくは一体どんな 利益りやくでしょうか。
それを親鸞聖人は正信偈しょうしんげに 説きあらわしてくださいました。
まず、「本願ほんがんを信ずる人は、 煩悩ぼんのうを断ち切らないままで さとりが得られる身となる」という 利益りやくです。
一般に、信心しんじん利益りやくといえば、災難をのがれるとか、 病気が治るとか、商売が繁盛するとかを言います。
そしてそういうことが実現するように、神仏に 祈願きがんします。
それをかなえてもらうことを 利益りやくといっています。
しょせん、自分の欲望を満足させることだけを考えているのが人間の姿です。
しかも人間の欲望には際限がありませんから、生涯のあいだ 祈願きがんをつづけなければならなくなります。
仏教は、迷いを転じてさとりを開く教えです。
したがって、そういう目先の欲望を満たすことを 利益りやくとはいいません。
浄土真宗では、ご信心しんじんをいただいたら、 煩悩ぼんのうを断ち切ることなく、 煩悩ぼんのうをもっているこの身のままで 最高のさとりを得る身となる、そういう比類のないすばらしい 利益りやくをいただくと申します。
目先の欲望の満足を追い求めて、そのことに心を奪われている人の多い昨今です。
自分の欲望をみたすためには他人を犠牲にしても平気な今日の風潮です。
そしてお互いが傷つけあっているのではないでしょうか。
みんなが、明るく、そして正しく生きてゆくことのできる世の中になるためには、どういう生き方が 求められるのでしょうか。
     

(話題)煩悩ぼんのうとは何でしょうか。 それを断ち切ることが私たちにできるでしょうか。


※『朗読法話集(第二集)』(本願寺出版社 1.200円 電話 075-371-4171)【『朗読法話集(第二集) 正信偈のこころ』として本願寺より刊行されています。】
この本は 「正信偈念仏偈しょうしんねんぶつげ」の 依経段えきょうだん を50編に分け、一つのテーマでひとつの内容を味わっていただけるようになっています。
※本書を朗読し、自分自身が味わいを深めていきたいものです。



今生最後と思うべし 一このたびのこのご縁は 我一人の為と思うべし 一このたびのこのご縁は 初事と思うべし 一このたびのこのご縁は 聴聞の心得


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