《 聖典の講座 》
 
『無常迅速 生死の事大なり』

     
第141回  蓮如上人御一代記聞書れんにょしょうにんごいちだいきききがき新釋 更新 2023年5月

 (11) 勤行ごんぎょう心得こころえ
 十月廿八日の逮夜に、のたまわく。
 正信偈和讃をよみて、佛にも聖人にもまいらせんとおもふか、あさましや。
 他宗には つとめをもして、廻向するなり。
 御一流には、、他力信心をよくしれとおぼしめして、聖人の和讃に、そのこころをあそばされたり。
 ことの七高僧の御ねんごろなる御釈のこころを、和讃にききつくるやうにあぞばされて、その恩をよくよく存知て、あらとうとやと念佛するは、佛恩の御ことを、聖人の御前にてよろこびまうすこころなりと、くれぐれ、 仰せられ候ひき。

 【意訳】
 十月廿八日、祖師聖人命日の 逮夜たいや勤行おつとめの際、蓮如上人のおさとしがあった。
 そなた達は、こうして勤行に「正信偈」「和讃」を 読誦どくじゅする場合、佛にも、祖師聖人にも、つとめてあげるようにおもうて居るのか。
 若し、そんな心持であるならあさましいことである。
 他の宗派では、 勤行おつとめの功徳をさしあげて 廻向えこうするのである。
 しかし、わが御一流すなわち御開山聖人のお流れをくむ真宗では、他力信心のおもむきを充分に 納得なっとくせよと思召して、その 旨趣こころを聖人の和讃に讃嘆あらせられてある。
 とりわけて三国の七高僧の御ねんごろなる御釈の 旨趣こころを聞きわけて 合点がてんされるように和讃にあらせられてある。
 その御恩のほどを充分にいただいて、あら尊やと念佛し勤行するのは、佛恩の深きことを聖人の御前にて報謝する次第であると、繰り返し繰り返し、仰せられたことであった。
 
 【解説】
 蓮如上人は文明年間、吉崎において勤行の形式を簡素化して制定された。
 即ちこれまでの 慣例かんれいであった「六時礼讃」をやめて、「正信偈」と「和讃」を念佛のあいだに 読誦どくじゅすることにおとりきめになったのである。
 そこで、ここに「正信偈和讃をよみて」とあるは、勤行のことである。
 そして勤行の正しい心得を諭されたのがこの一条である。
 読経はこれまで廻向の実践として普及されていたから、その蒙を ひらいて、真宗における「正信偈」「和讃」をつとめる読誦は自力廻向のためでなくて、御恩を領納し、 感佩かんぱいし報謝するいとなみであるということを明示されたのである。



※『蓮如上人御一代記聞書れんにょしょうにんごいちだいきききがき新釋』 
    梅原真隆うめはらしんりゅう
本願寺出版社
電話 075-371-4171
 

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今生最後と思うべし 一このたびのこのご縁は 我一人の為と思うべし 一このたびのこのご縁は 初事と思うべし 一このたびのこのご縁は 聴聞の心得


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