《 聖典の講座 》
 
『無常迅速 生死の事大なり』

     
第130回 女性のための正信偈しょうしんげ
親鸞聖人しんらんしょうにんのおすすめ」
更新 2022年6月

 33 親鸞聖人しんらんしょうにんのおすすめ
 

 「弘経大士宗師等ぐきょうだいじしゅうしとう
【弘経の大士宗師等】
 「拯済無辺極濁悪じょうさいむへんごくじょくあく
【無辺の極濁悪を拯済したもう】
 「道俗時衆共同心どうぞくじしゅうぐどうしん
【道俗時衆ともに同心に】
 「唯可信斯高僧説ゆいかしんしこうそうせつ
【ただこの高僧の説を信ずべし】



 自らを見失い、生きる方向を見失って、目先のことにとらわれ、右往左往している私たちに、釈尊があきらかにしてくださった阿弥陀如来の本願に 生きる道を、生命がけで、自ら求め、私たちに伝えてくださったのが、「弘経大士宗師等」であります。
 
 すなわち、「弘経」とは、釈尊の説かれたお経を弘めるということですが、親鸞聖人がここで「経」といわれていますのは、『大無量寿経』であります。
 この『大無量寿経』は、親鸞聖人が、
 
 
 如来の本願を説くを経の宗致と為す。即ち仏の名号を以て経の体と為すなり。
  (『教行信証』)

 と、教えてくださいます通り、阿弥陀如来の本願の名号があかされている「経」でありますから、「弘経」とは、結局 阿弥陀如来の本願を弘めてくださった人びと ということであります。
 「大士」とは、菩薩のことですから、インドの 龍樹菩薩りゅうじゅぼさつ天親菩薩てんじんぼさつのことであります。
 「宗師」とは、本宗の師ということで、中国の 曇鸞大師どんらんだいし道綽禅師どうしゃくぜんじ善導大師ぜんどうだいし、日本の 源信和尚げんしんかしょう源空上人げんくうしょうにん法然上人ほうねんしょうにん)のことであります。
 これらの七人の高僧については、すでにふれましたが、ここでそれぞれのお説き下さった かなめを復習の意味で一覧表にしますと次のようです。
 


 七祖名 生国・時代 功績 おもな著書
 
 *龍樹菩薩    
 インド A・D2世紀     
 難易二道  
 陸路のあゆみ難けれど 船路の旅の易きかな                      
 易行品  
(十従毘婆沙論の中)  
 
 *天親菩薩    
 インド A・D4世紀     
 宣布一心
                       
 本願力のめぐみゆえ ただ一心の救いかな        
 浄土論
 
 *曇鸞大師    
 中国・北魏  476~542       
 自力他力
                
 往くも還るも他力ぞと ただ信心をすすめけり      
 往生論註 
 
 *道綽禅師    
 中国・陳~北斉 562~645       
 聖浄二門
 自力の善をおとしめて 他力の行をすすめつつ      
 安楽集

 *善導大師    
 中国・隋~唐  613~681       
 古今楷定
 釈迦の正意をあかしてぞ ひかりと み名の因縁説く   
 観経疏
 
 *源信和尚    
 日本・当麻(奈良県)942~1017    
 報化二土
まことのくにに うまるるは、ふかき信にぞよると説く  
 往生要集
 
 *法然上人    
 日本・美作(岡山県)1133~1212    
 選択本願
 浄土真宗おこしては 本願念仏ひろめます        
 選択本願念仏集
 

 これら七人の高僧の生命がけの求道と伝道によって、阿弥陀如来の本願が私たちに伝えられなかったら、私たちはどのような人生を送ることになるのでしょうか。
 きっと「生死輪転の家」にありながら、そこにあることさえも気づかず空しく生命を浪費していくだけの人生を送りつづけることでしょう。
 ほとりのない(無辺)迷いの世界にあって、ただ煩悩に濁れ、悪を悪とも知らずに重ねつづけるだけの人生を繰り返すことでしょう。
 そんな私たちが、阿弥陀如来の本願によって、煩悩の泥沼にはまりこんでいくはずのところをすくいあげられお浄土への人生、すなわち正定聚の人生を 生きる身に仕上げられるのです。
 
 末法濁世の時代に生きる出家の人、在俗の人も共に手をとりあい、ただ、七人の高僧のお説き下さった教えに順って、共に一つの道を 歩ませて頂こうではありませんか、とおすすめくださるところに、『正信偈』の最後の二句のお心があるのです。
 自らの説を主張するのではなく、謙虚に、七高僧の導きをよろこび、おすすめ下さる親鸞聖人の深い深いお心を、本当に私たち一人ひとりが、 しっかりと味わわせて頂きたいものであります。
 
 



※『女性のための正信偈しょうしんげ』 
    藤田徹文ふじたてつぶん
本願寺出版社
電話 075-371-4171
 

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今生最後と思うべし 一このたびのこのご縁は 我一人の為と思うべし 一このたびのこのご縁は 初事と思うべし 一このたびのこのご縁は 聴聞の心得


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